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映画『プロメア』の驚異的に精緻な設定とモチーフを読み解く

 

映画『プロメア』を見た。とにかく熱いストーリー、目を見張る映像技術、鳥肌の止まらない演出、愛着がわくキャラクターたち、どこを取っても最高な映画。みんな観よう。
 
特に感動が止まらないのは、巨大なジグゾーパズルが組み上がるようにキレイに繋がっていく緻密な設定群。
 
というわけで、以下では設定とモチーフに焦点を当てて、具体的に『プロメア』のどのへんがスゴいのかを分析/考察する。
 
もちろんネタバレ満載なので『プロメア』まだ観てない人は絶対に読まないように。
 
 
 
 
 
 
 

■モチーフと設定

▼3つの図形

『プロメア』のオープニング映像では、まず三角形が四角形に押し込められる映像が流れ、その後丸のイメージが登場する。『プロメア』で最も重要なモチーフはまさにこれら3つの図形、即ち「三角形」「四角形」、そして「丸」なのだ。それぞれ詳しく見ていこう。
 
まず三角形と四角形は
 
  • 三角形……プロメア・バーニッシュの象徴
  • 四角形……火消し・体制の象徴
 
という役割を持っている。これは気づいた人も多いのではないだろうか。
 
三角形が用いられた主な箇所は、プロメアの火の粉、バーニッシュの死灰、プロメティックエンジン(後述)、リオを射出する砲台、マグマ(三角形のポリゴンで構成)、リオが氷の池に落ちた際の蒸気、プロメティックエンジンで開いたワープホールなど。これらは全てバーニッシュ・プロメアに関係するものだ。
三角形は鋭角でトゲトゲしいイメージであり(冒頭のストレス/抑圧との連関)、また作中で度々登場する"火山"の記号でもある。『プロメア』のロゴのMも、大きい三角形から小さい2つの三角形を切り出すことで構成されている。(我々の住む世界で)建造物の窓に描かれる赤い三角形は「消防進入口」を表し、人を殺さず逃げ道を用意する「バーニッシュの誇り」にも通じている。(赤い三角形はレスキューのメカにもデザインされている)
 
四角形が用いられた箇所は、クレイが作った街の建造物(とその屋上)、氷(四角形のポリゴンで構成)、フォーサイト社の紋章、火消しのメカニックデザイン、クレイの研究所(とそのエレベーター)など。火消しや体制側に使われる。
四角形は、理性的で整然と敷き詰めることができる「四角四面」のイメージ。規律や世間体を重んじるクレイのキャラクターを表現している。(cf.リオ「僕らよりも先にその凝り固まった頭を冷やせ!」)
 
これにより、オープニングの「四角形が三角形を押し込め、歪める映像」の意図がわかる。あれは、体制によるバーニッシュの抑圧を意味しているのだ。
 
そして作中には、三角形と四角形が共存する箇所も登場する。これは主にバーニッシュ/プロメア側と体制側の交錯(特にクレイ)を意味している。具体的には、プロメポリスの建造物の角が削られて青い三角形が現れていたり、クレイの紋章は三角形が組み合わさった四角形となっていたりする。(ちなみに、作中で用いられるアルファベットのフォントは四角形から三角形/四角形を切り取ったデザインで統一されている。)
 
次に、もうひとつの重要なモチーフ「丸」について。丸は以下の役割を担っている
 
  • 丸……共存、物語の決着
 
つまり「丸」は物語が"丸く"収まっていくさまの象徴として用いられているのだ。
 
丸が初めて印象的に使われるのはデウス博士の研究室。蒸発した池の形が丸で、研究室も球の形をしている(ガラス張りは三角形の敷き詰め)。移動用のエレベーターも球形で、内部のライトも丸く、研究所の画面も全て丸い(途中に露骨に水玉コラを意識した演出があるが、これも比較的地味な「丸」というモチーフを強烈に印象づけるための装置になっている)。彼の作ったメカ(デウスエクスマキナ)も丸っこく、リオが乗るポットも球形……今までほとんど登場しなかった「丸」というモチーフが、突然至るところに出現する
 
序盤のニュースでバーニッシュの隔離政策と、それに反対するデウス博士が登場し、博士が対立の解消を望んでいることがわかるが、ガロたちが研究室を訪れるシーンを境に「共存」に向かって物語が終結していく。博士の作った「デウスエクスマキナ」はその名の通り、(クレイが葛藤したような)極めて解決の困難な局面を丸く収めてしまう装置として活躍する。
 
そして「三角」と「四角」と「丸」が一箇所に集まるとき、物語は収束に向かっていくのだ。 これらの図形がひとつに合わさったものといえば、物語の終結に重要な装置であるプロメティックエンジンだろう。回転部分は丸、フレームは三角、ボディは四角で構成されそれらが積み上がっている。ただ、それだけでは足りない。初期状態では、セントラルポッド三角形で構成された正八面体(横から四角形に見るカットがある)で、丸が不在なのだ。しかし、そこにコアとしてデウスエクスマキナの球形ポットが加わることで3図形が揃い、初めて解決策が見出されていく。リオとプロメアが意思疎通し、「燃やし尽くす」という手段をとるのだ。
 
そういえば途中、平穏な生活を望むバーニッシュとしてピザ屋の青年が登場するが、彼がピザ屋なのも偶然ではない。「ピザ」というのは三角形のピースが円を構成している。つまり「バーニッシュ(=三角)」も「平穏な共存(=丸)」が可能である、ということを暗示しているわけである(彼のTシャツには円形の状態から一枚だけ切り取られたピザの絵が描かれている)。
 
さて、序盤から太陽のレンズフレアが「四角形」で描かれているのを印象的に感じた人も多いと思われる。なぜ太陽の反射が四角形で描かれているのか。それにも理由がある。
クライマックス、一惑星完全燃焼でガロデリオンの炎が「丸」を象徴する太陽に届くが、その際に太陽の表面に描かれる模様は「三角形」となっている。そう、ここでも太陽を中心に「丸」「三角」そしてレンズフレアの「四角」を揃えることで、物語の決着が表現されているのだ。 その証拠に、一惑星完全燃焼の後のラストシーンのレンズフレアは四角ではなく「丸」で描かれている(ラストカットの拳を合わせるシーンにも丸いレンズフレアが登場)。こうして、物語は大団"円"を迎える。
 

命名関連

名前については曖昧な部分が多く憶測が大半を占めるので、以下はホントに雑考。
 
「プロメア」「プロメティックエンジン」「デウス・プロメス」などの命名は全てギリシャ神話の火の神「プロメテウス」による。
 
ガロは作中で「燃える火消し魂」という印象的な撞着語法(矛盾表現)を度々用いる。それを意識してか、『プロメア』の火消しサイドのキャラクターの名前は、火消しにもかかわらず火にまつわるものが多くなっている。隊長の「イグニス」ラテン語「炎」「ヴァルカン」はおそらく「ヨーロッパの火薬庫」からの連想。ルキアラテン語「光」「ガロ」「火炉」からのもじりだろうか。ちなみに「ガロ・ティモス」の「ティモス」ギリシャ語で「魂」
 
次にバーニッシュサイドの命名を考えたい。
バーニッシュサイドは、消防サイドと対照的に火消しに関係する単語が名前に入っている。ときに、焚き火を消すときにその方法は2通りあって、ひとつは「水」をかけて温度を下げて冷却するもの、もうひとつは「土」をかぶせて火を閉じ込めて消す方法だ。「リオ」スペイン語「川」だが、激昂ののち水に落ちて頭を冷やし、ガロとともに火消しに臨む態度に対応する(「フォーティア」ラテン語「勇気」)。一方で「クレイ」は英語で「粘土」(ただしスペル違い)だが、衝動を自分の内側に押し込めることでプロメアを抑え込む方法が土による消火に対応している。クレイが突然「滅殺開墾ビーム」土による「火消し」を図ったこともこれで説明がつく。リオの「炎から灰へ、灰から土へ」というセリフも、火と土の対立を示唆する。
 
 追記:人名の由来研究についてはいいまとめがありました。

▼その他モチーフに関する端書き

 

●アメコミ

ビビットな色使い、炎に用いられる色収差、キャラ紹介画面でのポップアート風のハーフトーン、クレイの回想シーンの絵のタッチ、マッドバーニッシュの変身に見られるヴィラン風のデザインなどは全てアメコミの文脈からの借用となっている。

●火消し
江戸の火消し隊、歌舞伎の見栄のような和風モチーフがてんこ盛り。ガロの「メ」のバンドは江戸時代の消防団「め組」がモチーフであると明かされている。ラストの「燃やしきって消す」という解決法は江戸の火消しの手法そのままである。
 
※タトゥーだと思っていた「メ」はバンドとの指摘を頂いたので修正致しました。失礼しました……!
 
●今石×中島の過去作からのモチーフの借用
・無茶で破天荒で命名したがりですぐに見えを切る熱血漢……というガロキャラク
ーは『天元突破グレンラガン』のカミナに通じ、それを諌めるアイナのポジションもヨーコを彷彿とさせる。そしてコアを破るドリルはまさにシモンではないか!
・隙間の少ない書体を画面いっぱいに使い「テロップごと中継」「字幕を吹き飛ばす」などの遊びのある文字演出が頻出する様子は『キルラキル』を思い出す。「人類を守るために多少の犠牲を払ってでも信条を押し通すが、表面では規律を厳格に守る」というクレイのキャラクターは鬼龍院皐月に近い(白い服装も)。
 

▼キャラクターデザイン

TRIGGER作品に出てくるアシンメトリーなデザインのキャラクターは、規則を守らず、旧来の凝り固まった価値観を打破する存在として描かれている。グレンラガンのカミナ、キルラキルの纏流子、そしてプロメアのガロ。
 
マスコットキャラクターとして小動物(ヴィニー)が出てくるのもTRIGGERではおなじみの演出(グレンラガンのブータ、キルラキルのガッツ、パンストのチャック)。
 
 
ついでだから脚本と映像についてもちょっと語らせてくれや。
 

■ついでに脚本について

▼絶対的正義の不在

『プロメア』ではまず「正義vs悪」というシンプルな二項対立を破壊するところから物語が始まる。はじめに「いかにも悪そうな」デザインであるマッドバーニッシュが登場し、そこに「いかにも正義そうな」レスキュー隊が駆けつけ、対峙する。しかしマッドバーニッシュの中から出てくるのは「自分の正義を持ってそうな」リオで、逆にレスキュー隊の上層部からは「いかにも悪そうな」ヴァルカンが登場。序盤で正義と悪の構図が入り乱れ、この作品が単純でないことを示唆する。
 
『プロメア』の大きな特徴は、「視聴者が共感できる正義」が登場しない点だ。体制(クレイ)サイドは「バーニッシュを踏み台にし、大半の人間を犠牲にすることで人類を存続させる」、バーニッシュ/プロメアサイドは「人は殺さず、しかし抗いがたい内なる叫びに従って街を燃やす」という思想。どちらも正義/悪と一刀両断できない複雑さを持っていて、そこをどう調停していくかが見どころになっている。(このシンプルな二項対立と絶対的正義の崩壊というテーマは『デビルマン』『寄生獣』『進撃の巨人』『東京喰種』と様々な作品で見られるテーマ。)
 

▼抑圧と「個」を取り戻す物語

『プロメア』では「名前を呼ぶ」という行為が象徴的に使われる。作中でマイノリティであるバーニッシュは、「バーニッシュ」であるというだけでひとくくりにされ、個性を捨象されている(「バーニッシュの焼いたピザなんて食えるかよ!」)。それに対するアンチがリオで、リオは必ず相手を名前で呼び、自分を名前で呼ぶことに執着する(「リオ・フォーティアだ。一度聞いたら覚えろ、ガロ・ティモス」)。一方でクレイは相手を名前で呼ぶことは少なく、ガロを名前で呼ぶのは(表彰を除くと)おそらく一回(激昂する場面)、リオを名前で呼ぶのもおそらく一回のみ。ガロはどうかというと、前半は「マッドバーニッシュの親玉!」「旦那」「司政官がそんなことするわけがねぇ!」などと相手を名前で呼ばないが、後半には「どういうことだ、クレイ!」「リオが俺を守ってくれた」と名前で呼ぶようになり、内面の変化が演出される。このようにして、バーニッシュは「個」としての、名前を持った自分を取り戻していく。
 
この「マイノリティ差別からの脱却」のサイドストーリーとして、アイナが「アイナ」としての個を取り戻す物語も並行して流れている(「エリスの妹……」→「アイナはアイナだ」)。
 

■すこし映像表現について

▼CGと手描き

精度の高いCGと柔軟な手描きを組み合わせた映像表現は見事。ダイナミックに視点を回転させるカメラの長回しはCGでなければできないし、レスキュー隊がピザを食べるシーンのようなコミカルな表情/動きは手描きでしか出せない。
序盤でガロがヴァルカンに楯突く場面では、CGで描かれた二人を表情の見えないアオリの視点から回し、そこに漫画のようなコマ割りで表情を描くことでダイナミックさとコミカルさを併せて良く表現している。CGとセル画併用でないとできない面白い手法。
 

■その他好きなところ

・レスキュー隊の出動のときのそれぞれのロッカーにめちゃくちゃ個性出てるの好き。
・ルチアがアケコンでメカを操作してるの好き。後半のシーンでは横持ちコントローラーで操作しててそれも好き。
・戦闘中にルチアと画面通話してる最中に衝撃で中継切れる演出好き。
・ガロがクレイに「左手を犠牲にして救ってくれた……」と言ったときにクレイの左手が元の状態になっていることで、クレイが実は「肉体が永遠」なバーニッシュであることを予感させる仕組みになってるの好き。
フォーサイト財団のロゴ(正方形の中にFを2つピッタリはめ込んだデザイン)好き。ちなみにクレイの椅子もFが組み合わさったデザイン。
・みんながインフェルノボルケーノマルゲリータピザ食べてるときの表情好き。
・リオが前面装甲を突破できなと悟り、下に滑り込んで左後ろのタイヤ(or下部の装甲の薄い部分)を狙って攻撃するの好き。
デウス博士の研究所のエレベーターが止まる部分でみんながガクってなるの好き。
・研究所の画面でアイナを水玉コラしちゃうの大好き。
・ルチアがリオデガロンを見て「どういうことなのよーっ!」と嫉妬する様子から、ガロがなんだかんだでみんなから愛されているのが垣間見えて好き。
・プロメディックエンジンが壊れてプロメポリスが落下して、グレイザーXとリオデガロンが宙に浮くシーン好き。
・リオが口づけで炎を送り込むときと違って、ガロが送り込むときはちゃんと気道の確保してからやってるの好き。人工呼吸より先にちゃんと(両手で)心臓マッサージするのも好き。
・アイナかわいい。
・リオもかわいい。
・全部好き。
 
 
 
 
 
 
 
 
・全部好き!!!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
おわり

 

 

 

 

 

謝辞

 見終わったあと餃子の王将に入って語り合った友人たちへ。ありがとう。

Twitterでできない話をやるDiscordサーバー「コーヒーハウス」を作った

こんにちは。フロクロです。

先日、Discordサーバー「コーヒーハウス」を立ち上げました。

(上のツイートの招待リンクは期限切れしてます。有効な招待は最後に貼ります)

 

立ち上げた動機としては、Twitterは個人個人のミニブログのような状態のためひとつのテーマに沿って会話するというのがむずかしい……そこでDiscordという場を使って、緩やかな仕切り(チャンネル)を設けた交流や議論ができたらいいな〜という思いつきで作成しました。理想としては昔の2ch(のいい雰囲気のスレ)です。

 

名前は近世ヨーロッパの社交場であるコーヒーハウスから取りました。

 コーヒーハウス、めっちゃいいですよね。ひとつの理想です。

 

そんなDiscordサーバー「コーヒーハウス」、こんな人は馴染むかもしれません。

  • 制作や創作が好きな方
  • 言葉が好きな方
  • 学ぶのが好きな方
  • 読書が好きな方

このような方はぜひコーヒーハウスにいらしてください。参加は記事の最後の招待リンクから。 

 

具体的なシステムを紹介します。

 

大きなカテゴリとしては

  • ┗ようこそ
  • ┗雑談
  • ┗トピック_情報
  • ┗トピック_変化球
  • ┗トピック_語るスレ

に分かれています。順番に見ていきましょう。

 

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まず入った人は「エントランス」に送られてきます。雑談は「テーブル」で分けられていて、好きなところに話題を持ち込んで話すことができます。話題が2つ出てきたら隣の空きテーブルに移動したりするわけです。「カウンター席」で「こんにちは~」と挨拶すると私(フロクロ)が出てきて対応します(最近はいない!)。参加してみたけど話に入りづらい、という方はまずここに座ってください。常連がここで盛り上がるのは禁止です(盛り上がったら別の席に移動)。

 

 トピック_情報カテゴリでは集合知や他人のオススメコンテンツを知るのに使う場所です。

 

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色んな人のおすすめコンテンツが知れます。こういう場所自分が欲しかった…… 

 

 トピック_変化球は特定の縛りのもとでしか発言できないスペースです。

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他のスレがどんな内容なのかは入って確かめてください。たぶん面白いです。 

 

 トピック_語るスレは様々なテーマに沿った会話や議論をするスレです。

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同好の士が集まって盛り上がれます。

 

新しいスレは「要望・質問」スレで提案すると立ったり立たなかったりします。人気がないと潰れます。

 

こんな感じの場所です。現状ありがたいことにそこそこ賑わっていて、毎日様々な話題で盛り上がっています。

 

興味の湧いた方は以下のリンクからご参加ください。ご来店お待ちしております~。

https://discord.gg/wQufBq4


 

「カードに適当な単語を書いて架空のことわざを作りまくるゲーム」をした。

こんにちは。フロクロです。

 

夏ですね。

 

夏休みに突入して暇な人、そんなのお構いなしに忙しい人、色々な夏を過ごしているとは思いますが、まぁ言うても暇ですよね。

 

そんなあなたに、今日は先日開発した2人用ゲームを紹介したいと思います。

 

その名も、「カードに適当な単語を書いて架空のことわざを作りまくるゲーム」(略称:KTTKKKTゲーム)。

 

ルールはシンプル。

  1. ひとりが架空のことわざの「上の句(「急がば」みたいな)」を考えて、カードに書く。
  2. もうひとりは「下の句(「棒に当たる」とか)」を考えて書く。
  3. いっせーのでそれを連結して架空のことわざを爆誕させる。

これだけ。ことわざが爆誕したらそのことわざの意味と例文を考えます。

用意するものは百均の「情報カード」とえんぴつだけです。 

 

暑さで頭がおかしくなりながら考えたこのゲームを実際に知人(M@tsi)と2人で遊んでみたので、その様子をお見せしましょう。

 

続きを読む

漫画村閉鎖!?代わりの読み放題サイト4選!!

こんにちは。フロクロです。

 

今日、無料で漫画が読めるサイト漫画村が閉鎖し、「サイトが見れない!」と話題になりました。
今まで漫画村で暇をつぶしてたのに……という人も多いと思います。

 

そこで、今回は漫画村終了後も使える無料で様々なコンテンツが読めるサイトを4つ紹介したいと思います!

 

※注意:海外のサイトを含みます。

 

 

1.OpenStax

openstax.org


米ライス大学が設立した、主に大学レベルの教科書を無料で提供しているサービス。物理学、経済学、心理学など様々な科目の教科書が用意されており、そして全てピア・レビュー(※査読。研究者同士で内容を検討すること。)済みなので内容も保証されています。それが全て無料!
ウェブ上での閲覧の他、PDFやkindle版もあり、印刷されたものもAmazonで格安で手に入ります。紙派にもうれしいですね。


英語で書かれた教科書は、日本語のものと比べて解説が丁寧で読みやすいものも多いです。空いた時間に好きな学問を深めてみるのも良いでしょう!

 

 

2.Google Scholar

https://scholar.google.co.jp


Googleが提供する、世界中の論文や学術誌が検索できるサービス。海外のものだけでなく日本語論文も検索できます。
学術論文は無料で閲覧できるものもあり、もし大学に所属している人なら大学からアクセスすれば有料資料も見放題、という場合もあります。

論文検索なら https://ci.nii.ac.jp など他にもいくつかサイトがあるので併せて活用すると良いでしょう。


暇つぶしに適当なワードを検索窓に突っ込んで、「いろんなこと究めてる人がいるんだな」と学問の深遠さに思いを馳せるのもよいのではないでしょうか。

 

使い方を短く解説してくれた記事がありました。Google Scholar、便利ですね。みんなで巨人の肩に乗って遠くを見わたしましょう!

卒論書くなら知っておきたい「Google Scholar」とその使い方 | NOW TO THE FUTURE

 


3.Stanford Encyclopedia of Philosophy(スタンフォード哲学百科事典)

Stanford Encyclopedia of Philosophy


無料で閲覧可能な哲学のオンライン百科事典です。
スタンフォード大学が運営しており、それぞれの記事は各分野の専門家により執筆されています。Wikipediaなどと違い、これらの記事も先ほど同様ピア・レビュー(査読)された上で掲載されているので安心です。


通常の百科事典と異なり、ウェブ上のものは紙面スペースの制約が無いため記事のボリュームも満点。飽くまで人類の積み重ねた思想たちと向き合えます!!

 

 

4.Biography.com

www.biography.com

 

歴史上の人物から現在活躍中の俳優まで、さまざまな人物の伝記を取り扱ったサイトです。

Wikipediaでは得られないようなストーリーや事績も載っているので、読み物としても面白いものになっています。最近の人だとドナルド・トランプマーク・ザッカーバーグエド・シーランなんかも載っていて、古いところだクレオパトラマリア様なんかの記事もあります!

 

通学などの暇な時間に気になった有名人の生涯を追体験してみるのも悪くないでしょう。

 

 

 


いかがでしたでしょうか!

英語のサイトが中心になってしまいましたが、それだけ英語圏には高品質で充実した無料のサイトが多いということです。

このように、漫画村が無くとも優良な”読み放題”サイトは数多く存在します。

是非色んなサイトを試してみて、教養を深めてください。

 

 

じゃあな!!!!!!

 

 

 

Principles of Economics (English Edition)

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Principles of Economics 2e

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  • 作者: Timothy Taylor,Steven A Greenlaw,David Shapiro
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  • 発売日: 2017/10/12
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アンビグラムの作り方 基礎編#1「アンビグラムを作ってみよう」

※この記事は去年の一連のツイート「アンビグラムをつくる」のこってり版です。忙しい方はツイートの方をご覧ください。

※18.10.28 大幅に加筆修正しました。

 

こんにちは。アンビグラム作家のフロクロです。

 

突然ですが皆さんはアンビグラムというものをご存知でしょうか。

まぁ「アンビグラム 作成 [検索]」とかでここにたどり着いた人はご存知かもしれませんが、一応説明しておくと、「回転させたり、鏡写しにするなどした2通りの方法で読むことができる文字アート」のことですね。

 

例えば拙作「バケツを引っくり返したような雨」は、「雨」という漢字をひっくり返すとカタカナの「バケツ」になります。読めますでしょうか。

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さて、この記事はアンビグラム」の作り方を解説したものです。 

アンビグラムは「なんか特殊なセンスのある人しか作れないんじゃないの」などと思われがちですが、実際は観察力と粘り強さがあれば、案外誰にでも作れちゃうものなのです。

というわけで、以下で私がアンビグラムをどんなふうに作ってるかを紹介していこうと思います。

 

完成までの主な手順

【Step0】アンビグラムの種類を知る
【Step1】単語を探す
【Step2】対応付け

 

(私の他の作品はpixivに置いてあります。ぜひ。)

 

【Step0】アンビグラムの種類を知る

 

アンビグラムを作る前に、まずアンビグラムにどんな種類があるのかを知っておくことが重要です。アンビグラムはひっくり返すだけではありません。90度回転、鏡写し、図地反転etc……

 

この記事でアンビグラムの種類をすべて紹介すると長くなってしまうため、こちらの記事にまとめました。

2969.hatenablog.com

アンビグラムについてまだ良く知らない方は、ぜひこちらからお読みください。アンビグラムの名作と合わせてその手法を紹介しています。

 

さて、アンビグラムの種類を知ることがなぜ重要かというと、それは一つの単語に対して様々な見方ができるようになり、アンビグラムが完成する確率が上がるからにほかなりません。

 

例えば、「虹色」という熟語は180度回転では作りづらいですが、「虹」を90度倒して「色」にする、というタイプで作るとピタッとハマります(下図)。

 

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いろいろな手法を知っておくことで、一つの言葉にも様々な可能性が見えてくるのです。
アンビグラムの種類が一通りわかったら、いよいよ制作スタートです。


【Step1】単語を探す

アンビグラム制作で行う最初の工程はズバリ「素材となる単語を探す」です。

 

「この単語はひっくり返したらうまくいきそうだな」「これ鏡写しでアンビグラムにできないかなぁ」と、先ほどの「アンビグラムの種類」を意識しつつアンテナを張りめぐらせて言葉を観察しまくるのです。

 

しかし、いきなり「言葉を観察しろ」なんて言われても難しい。
そこで、一体どんな言葉が「アンビグラムの素質がある単語」なのかを見ていきたいと思います。

 

アンビグラムの素質

以下からはわかりやすくするため、180度回しても同じ文字列になる点対称アンビグラムに話を絞って進めていきます。


単語にはアンビグラムの素質」があるものとないものがあります。素質が抜群に備わっている単語は楽にアンビグラムが作れて、逆に素質のあまりない単語は作るのがめちゃくちゃ大変になります。

 

素質のある単語の代表例が「道具」です。横書きだと分かりづらいですが、縦書きにしてちょっといじくると……



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ホラ!!!もうこれアンビグラムでしょ!!

このようにもとの単語を殆ど崩さずに成立するアンビグラムは「発見的作品」とか「自然アンビグラム」とか呼ばれます。が、流石にここまで素質ある単語はそれほど多くありません。

 

素質のあるなしは字の「密度」と関係します。

例えば「一」をひっくり返すと「鬱」になるアンビグラム作ろうと思ったら、これは字画の密度の差がありすぎて大変ですね。無理ですね。

 

一方で「予」をひっくり返すと「告」、「昭」をひっくり返すと「和」、とかなら二文字の密度が近く、文字の構造もちょっと似てるので比較的アンビグラムにしやすそうです。
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実際に作ってみるとこんな感じです。

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 ↑『予告』 180度点対称

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↑『昭和』 180度点対称

 

どれが「アンビグラムの素質」がある単語なのかは、いろんな作品を見たり、手元で実際に文字をいじっているとだんだん掴めると思います。


【Step2】対応付け


単語を決めたら、実際にアンビグラムを形にしていく作業です。「道具」のようにほとんどいじる必要が無い場合は別ですが、大抵のばあい文字と文字が同じ形になるよう整える作業が必要です。私はこの作業を「対応付け」と呼んでいます。
ここでは具体例を交えて対応付けのやり方を見ていきましょう。

 

【例1 『アイスクリーム』】

1.とりあえず書く

まずはカタカナの作例。「アイスクリーム」の180度点対称を作ってみましょう。


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とりあえず紙に「アイスクリーム」の文字を書いてみます。紙をぐるぐる回しながら逆さ文字を並べて書いてみて、見比べましょう(ヨコ書きとタテ書きどちらも試すのが大事)。

 

2.似てるところを探す

逆さ文字と通常文字で似てる部分が無いか探します。すると、オッ、タテ書きのときに「ア」と「ーム」がピタッとハマりそうじゃないか!!
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3.余りを抜き出して見比べる

「ア……ーム」が済んだので残りの「イスクリ」を抜き出して、また見比べてみます。

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これはもう1文字ずつ対応付けしてけば良さそうですね。紙を回しながらたくさん書きまくって、適当に中間を探りましょう。

 

4.清書
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最後の作業。手書きなりパソコンなりで対応付けができたアンビグラムを清書します。フリーソフトinkscapeとかAdobeイラレとかを使うといいと思います、が、ここはタイポグラフィの領域なのでここでは省き、別の機会に譲りたいと思います。

 

もう1つ、今度は漢字の作例を見ましょう。

 

【例2 お題:「妖怪」】

今度は単語とアンビグラムの形式を決めるところからやりましょう。前にTwitterでお題を募集したときに「妖怪」というものを頂いたので、今回は妖怪の名前で作ってみたいと思います。

 

1.たくさんの単語を観察して、題材を探す

アンビグラムを作るにはまず素材となる単語が必要なので、探しに行きましょう。

今回はテーマが「妖怪」なので、Wikipediaの妖怪一覧から探そうと思います。

日本の妖怪一覧 - Wikipedia

このページ、なんかやたら詳しいな……

この中から字の密度が近い(かつ自分が知っている)妖怪を探します。

猫娘」「般若」「貧乏神」「物の怪」あたりは字ごとの密度/ひっくり返したときの密度が近そうです。

紙で軽く書いてみた結果、「猫娘」や「物の怪」はキツそうなので「般若」で頑張ってみることにします。

 

2.とりあえず書く

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アンビグラムは常に手元の紙に書くところからスタートします。

とりあえず180度回転と90度回転で般若を書いてみました。

すると、オッ、なんか90度回転のときので囲った部分が何となく似てませんか?

似てないって?似てなくても、歩み寄れば和解できそう、くらいの近しさを感じはしないでしょうか。というわけで今回は「般若」で90度回転アンビグラムを作っていくことにします。

 

3.共通した字画を探して、寄せる

 

ここからはお待ちかね、対応付けの作業です。今回はやや険しい戦いを強いられそうな予感がします。

まぁとりあえず白い紙を用意して書いてみましょう。

漢字でアンビグラムを作るときは、私はまず題材の漢字をくずし字で書いてみることにしています。何故かというと、文字を崩して書いてみることで「どの字画が含まれていれば”その字”と認識できるのか」、すなわち「文字の限界」を探ることができるからです。これについては次回くわしく書きます。

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「般」と、90度倒して「若」をくずし字で書いてみました。汚いですが、「般」も「若」もギリギリ読めます。これを参考にしながら、2文字の間を取っていきましょう。

ここからはひたすら根性。2つの文字がバランスよく成立するポイントを模索しまくります。

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アイスクリーム同様紙を回しながら、妥協点を探ります(下に行くほど後に書いたもの)。すると、最終的にはそこそこ「般」と「若」が同居してそうな字画が現れました。

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同じ画像を90度回すとこんな感じ。葛藤の歴史です。

もうひと押しブラッシュアップして完成を目指しましょう。

をつけたものをもう一度書き直してみます。

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読める読める。

いい感じですね。ちなみにこのときにテクニックとして、「般」と「若」に共通する字画(線)は太く、余ってる字画はひかえめに描いています。これについても次回くわしく書きます。

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4.清書

最後にイラレに上の写真を取り込んみ、清書して完成。

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『般若』90度回転。

読めますかね。わりと読めそうですね。良かった~。

これを更に骨組みとしてタイポグラフィ的な装飾を加えるとこんな感じです。

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この最後の装飾の工程については、やはりアンビグラムとは別の話になるので別の機会に話します。

 

――――――――――――

 

さて、以上がアンビグラム制作のざっくりとした流れでしたが、いかがでしょうか。アンビグラムというのが「直感が天から降りてきて閃く」ようなものではなく、地道な作業の集まりによって完成するものだということがお分かりいただけたでしょうか。

 

最後に、これを読んで「さっそくなんか作ってみたい!」と思った方にひとつ宿題を出したいと思います。

「雑誌」で180°回転アンビグラムを作ってみてください。対応付けの練習です!

 

(完成したものはぜひ、Twitterハッシュタグ「#アンビグラム講座」をつけて投稿してください。)

 

今回はこれまで。次回は対応付けについて詳しくお話します。

「アンビグラム」って何?アンビグラムの種類と作家

こんにちは。アンビグラム作りが趣味のフロクロです。

突然ですが、皆さんこの「アンビグラム」というモノをご存知でしょうか。

最近ちょくちょくネットで話題になるので知ってる方もいるかもしれませんね。アンビグラムを知らない方は、スマホタブレットなどの"回せるデバイス"でこの記事を読んでいただけると幸いです。

今回はこのアンビグラムとは一体何なのかを、分類や作品の紹介を交えてつらつら書いていきたいと思います。

 

 

アンビグラムの定義と分類、具体例】

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上にある文字、読めるでしょうか。

 

「すみません」ですね。

 

実はこの文字列、180度回しても読めるのです。スマホを回したりして確認してみてください。(上のは拙作です)

そして、このような作品は「アンビグラム」と呼ばれており、これを大雑把に定義すると「2通りの方法で読むことができる文字図案」を指します。

定義だけだとよくわかりませんね。アンビグラムのバリエーションを分類しつつ、以下でアンビグラム作家の方々による具体的な作例を見ていきましょう。

 

①180度回転型

 一番有名でオーソドックスなタイプ。上の拙作「すみません」もこのタイプです。

ひっくり返しても同じ語になるモノと、別の語に変化するものがあります。

https://image-sign.tumblr.com/post/161308892613/逆転-意瞑字査印-アンビグラム-さかさ字

image-sign.tumblr.com

意瞑字査印さん作の「逆転」。逆転しても逆転のまま、という自己言及の利いた作品です。

 

https://image-sign.tumblr.com/post/161308744693/たぬきそば-きつねうどん-意瞑字査印-image-typography-sign

image-sign.tumblr.com

同じく意瞑字査印さんの「きつねうどん/たぬきそば」。ひっくり返すと入れ替わります。名作ですね。

 

②90度回転型

くるっと回るだけでなく、倒すと別の言葉、別の字になるタイプもあります。

 

ambigram-lab.tumblr.com

 igatoxinさんの『倒/起』。これも自己言及を含んだ名作です。

 

 

http://ambigram-lab.tumblr.com/post/158588949366/trumpetトランペット-90度回転変換によるアンビグラム

ambigram-lab.tumblr.com

 

kawaharさんの『TRUMPET/トランペット』はアルファベットを90°回すとカタカナになるというもの。見事です。

 

 

③鏡像型

 読んで字の如く「鏡写し」にすることで別の字が現れるタイプです。

 

ambigram-lab.tumblr.com

igatoxinさんの『送信/受信』。絶妙なデザインによって見事な可読性を保っています。

 

www.pixiv.net

鏡画家さんの『梅花』は、一見普通の文字に見えますがよく見ると斜めに線対称になっています。45°傾けて見るとわかるかもしれません。

 

④振動型

 「2つの文字を揺れ動く」ので振動型。回したり写したりせずに、2通りの文字が見えてくるタイプです。

 

 igatoxinさんの『妹/姉』は、見ていると2つの文字の間を揺れ動きのどちらなのかわからなくなります。

 

⑤図地反転型

有名な「ルビンの壷」の文字バージョン。2つの文字がパズルのピースのようにピタッとはまるタイプです。


igatoxinさんによる『深淵』。「深」を反転し白黒逆にすると「淵」になります。非常に美しい作品です。

 

http://ambigram-lab.tumblr.com/post/161268767241/生死-図と地反転のアンビグラム

ambigram-lab.tumblr.com

oyadge01さんの『生死』。これも無駄がなく美しいです。

 

 ロボットさんの『洞窟物語』は2文字の図地反転。スゴイですね。

 

 

 

他にもありますが、とりあえずはこのくらいにします。日本語アンビグラムには他にもまだまだたくさん名作傑作があります。

repeza.hatenablog.com

 

 アンビグラム作家のYΦUさんが作者の一覧をまとめてくださっているので、アンビグラムのより深い世界を覗きたい方はぜひこちらを御覧ください。

 

 

『君の名は。』を「言葉」の観点から考察する。

去年やや遅れて『君の名は。』を見て、衝撃を受けました。
何に衝撃だったかといえば、確かに絵も綺麗でストーリーも良かったんですが、何より「言葉」を大切にしていることがヒシヒシと感じられたのです。日本語が複雑に絡み合う織物の如き作品ですよ、これは。

というわけで、今日地上波で改めて見ながら、去年鑑賞して受けた衝撃を以下に(雑に)まとめました。

ただし以下に書いてあることは全部ワタシの憶測です。それでもよいならどうぞ。

あと、ネタバレ大いに含みます。念のため。

 

 

【この記事のアウトライン】

①『君の名は。』と「境界」……独特なドアの描写に始まる『君の名は。』のキーポイント。

②糸と「むすぶ」【赤い糸とそのメタファー】……組紐、彗星、神楽、へその緒、様々な形を取って現れる赤い糸。

③水と「むすぶ」【何故口噛み酒で入れ替わりが起こるのか】……水をすくい取る意味の「掬ぶ(むすぶ)」が三葉と瀧をつなぐ。

④奇数と「むすぶ」【偶数と「別れ」】……入れ替わりがあるのは三葉と一葉。そして死を暗示する四ツ谷。

 

 

①『君の名は。』と「境界」

 

君の名は。』の物語前半には、部屋の引き戸や電車のドアが画面の奥に向かって開くという特徴的な場面切り替えが多用されています。なぜこんな描写が使われているのか。
ズバリ、この物語の主題の一つは「境界」なのです。

まず冒頭には「たそがれ時(かれたそ/かはたれ時)」という言葉が登場し、「昼でも夜でもない時間」「人の輪郭がぼやけて、彼が誰か分からなくなる時間」と説明されています。
これはまず、たそがれ時が「人の境界を曖昧にするもの」であるということで、物語の主要なテーマ、「入れ替わり(自分と他人の境界が曖昧になる)」を象徴しています。
また、たそがれ時は「昼と夜の境界」であり、最後の瀧くんと三葉との出会いは夕暮れ(「カタワレ時だ」)に起こっています。(「カタワレ」は、「かはたれ」の糸守の方言とされている。彗星の「片割れ」や二人がずっとバラバラだった様子を彷彿とさせます。)
舞台設定も、9月から10月にかかっており、これは、秋、つまり「夏と冬」の境界です(昼と夜の境界である夕方に対応)。
また入れ替わりは「過去と未来」の境界をつなぎ、「都市と地方」の境界をつなぐものとしても描かれているのです。

 

(余談ですが、これらの設定、実はある作品と非常に似てるんですね。芥川龍之介の『羅生門』です。この作品も「境界」を扱う作品なんですよ。

羅生門の書き出しはこうです。

「ある日の暮れ方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。」

舞台は洛中と洛外を隔てる羅生門(都市と地方の境界)、時間は夕暮れ(朝と夜の境界)。季節は蟋蟀が鳴くことから秋(夏と冬の境界)だとわかります。雨止みを待つ下人は仕事をクビにされ生死の狭間(生と死の境界)を彷徨い、生きるために決断をする。
ほら、設定めっちゃ似てませんか(雨の後に遭遇があるし(後述))。多少参考にしてるんじゃないかと疑っていますがそのへんは謎です。)

物語の後半には、扉が奥に閉じる描写が2回登場し、どちらも三葉の死の直前に出てくる。ドアが開く場面展開が「境界を繋ぐ(入れ替わり)」のを表すのに対して、閉じる場面展開は「境界を閉ざす(三葉の死)」のを表していると感じます。

 

(18.01.04追記)

作中には「境界」を結ぶものが様々な形を取って登場します。「扉」や「川(③で詳述)」もそのひとつなわけですが、他にも「橋(一方ともう一方を結ぶ)」「階段(上と下を結ぶ)」「電車(場所と場所を結ぶ)」が2人を「結ぶ」ものとして描かれていますね。「電車」は隕石落下の前日、東京に来た三葉が瀧くんと出会う場所。「歩道橋」と「階段」は終盤で2人が出会う場所です。敢えて境界を繋ぐ場所を選んで出会わせているのでしょう。(ラストシーンで三葉が階段の上、瀧くんが下に位置しているのは、時間のねじれを結んでいる、という感じもします。)

 

季節と時間帯についてもう一歩考察すると、「春」と「朝」は「結びの始まり」「秋」と「夕暮れ」は「結びの終わり」、そして「冬」「夜」は「別れ」を表していると考えるとピタッとハマるんじゃないでしょうか。2人の入れ替わりは必ず朝に始まり、昼の間は続き、夜に終わります(寝てる間に想う相手のところへ行く、という構図が「夢の通い路」のオマージュなのは言わずもがな)。糸守で瀧くんと三葉が出会う場面は夕暮れですが、日が沈むと同時に2人は別れてしまいます。そして「秋」に2人は出会い、その秋が終わると入れ替わりも終わってしまう、というワケですね。そうしたら出会いの「春」はどこに行ってしまったのか、となりますが、これは時間がねじれて、出会いの始点である春が5年後に繋がったと考えると自然でしょうか。(桜の季節に東京で2人は再開します。出会いと別れがねじれて先に別れが訪れたことで、この再開はずっと続くんじゃないか、という感じもします。)

 

 

②糸と「むすぶ」【赤い糸とそのメタファー】

 

この物語のもうひとつ大事なキーワードは「むすぶ」で、劇中にも複数回「むすぶ(ムスビ)」というワードが出てきます。
「むすぶ」と言って真っ先に浮かぶのが「糸」で、物語の中でも「糸(あるいは紐)」、特に赤い糸や赤い紐が重要な役割を果たしています。
まず三葉が瀧くんに渡した赤い組紐が「赤い糸」であり「二人を結ぶもの」、そして赤い尾を引く彗星の片割れも「赤い糸」を象徴し、物語前半の神楽も「赤い糸」「赤い彗星」を表現しています。口噛み酒も赤い糸で封されてましたね。さらに物語後半に三葉の生涯を追憶するシーンがありますが、そこでもへその緒が赤い糸と結びつけて描かれていました。
三葉の祖母一葉も、「糸を繋げること」「人を繋げること」「時間が流れること」を「ムスビ」と表現していて、これらの「糸」の繋がりが主人公2人の繋がりを象徴していることを感じさせます。


(前半で三葉が中身の瀧くんが、奥寺先輩のスカートを縫ってあげるシーンがあります。あそこにも糸は登場しますが、ちゃんと赤じゃなくて緑の糸なんですね!瀧くんと奥寺先輩が結ばれないことを表しています。)

 


③水と「むすぶ」【何故口噛み酒で入れ替わりが起こるのか】

 

手元の漢字辞典を引くと、「むすぶ」という訓が与えられている漢字が2つあります。
ひとつは「結」、そしてもうひとつは「」です。
「掬」は「掬う(すくう)」という読みがより一般的ですが、「掬ぶ・掬う」はどちらも「容器を液体で満たす(「むすぶ」は特に両手を用いる場合に使う)」という意味、とあります。これは、三葉が口噛み酒を作る(口で噛んだ米を両手に吐き出す)場面や、瀧くんがその口噛み酒を容器に入れて口にする場面と見事に重なるではないですか。
一葉も「水でも、米でも、酒でも、なにかを体に入れる行いもまた、ムスビと言う」と言っており、これによって「口噛み酒によって2人がまた繋がる」ということを説明できます。
この場面以外にも水が「結び」の象徴としてたびたび登場しており、例えば宮水神社の御神体の周りの川は「あの世」と「この世」を結んでいます。また水で満たされた糸守の湖も「掬ぶ」を思わせます。
先程「赤い糸」の象徴と言った彗星は「ティアマト彗星」という名前がついていましたが、これの由来となったティアマトメソポタミア文明「海の女神」で、ここにも水が登場していますね。(このティアマトも海水と淡水の境界に住んでたとかなんとからしいですがこの辺は要調査。)
さらに2人の名前にもそれぞれ水が入っています(宮水の「水」、瀧の「氵」。)

水は流れるものでもあるので、「時の流れ」とも関係があるのでしょう。

(話がズレますが、少し名前の意味について考察してみます。瀧の「龍」は彗星を表してるんでしょうか。「立花」は花言葉が「追憶」なのがひっかかります。立花(橘)の花弁が5枚なのは「三葉」との対で後述の奇数と関係してるかもわかりません。)

 

(18.01.04追記)

君の名は。』では、他にも「水」が「結び」の装置として様々な場面で使われいます。

物語後半、瀧くんが糸守に来て三葉を探していると突然雨が降り始めます。その後で2人は出会う。雨→出会いの構図は一回ではありません。

物語の終盤、場所は冬(12月)の喫茶店。結婚を前にしたテッシーとサヤが瀧くんの隣で会話している場面がありますが、この時の天気も雨なのです。この2人の登場と外で降る雨が、来る春に瀧くんと三葉が出会うことを予感させる役割を果たしていると思います。

 

(三葉が初めて瀧の中に入ったときにも水を映したカットが何度も入りました(蛇口をひねる→水の溜まった食器→トイレ)。入れ替わりの直後に涙を流したり、糸守の絵を描く瀧くんが汗を流しペットボトルの水を飲んだりと、水が絡むそれっぽい描写はたくさんありますね。)

 

 

④奇数と「むすぶ」【偶数と「別れ」】

 

君の名は。』の中では、奇数と偶数がそれぞれ「結び」「別れ」の象徴として扱われています。
日本では偶数は2で割れるため「別れ(分かれ)」、奇数は割れないため「縁(結び)」に関係するとされますが、作中でもそれを反映した描写があるように感じます。
物語で入れ替わりの描写がある宮水家の人間は「葉」と「葉」ですが、どちらも奇数で「結び」を内包しています。
瀧くんが転んだ後の、三葉の生まれてからを追憶するような描写では、受精した胚(三葉)が2つから3つに分裂します。普通は倍々で4つに割れるはずですが、ここにも「3」という奇数へのこだわりが感じられます(形もちょうど三葉だし)。
また、瀧くんと奥寺先輩がデートの待ち合わせに選んだ場所は「四ツ谷」。「」は偶数であり、「」を暗示する数字です。そのデートの日に三葉の時間軸では隕石が落ち、三葉は死んでしまう。隕石が落ちる日の前日に三葉が瀧くんに会い、赤い組紐を渡し別れた駅も「四ツ谷」でした。
(「三葉の死」の前後と「主人公2人の出会い」以外のほぼ全ての場面で、主人公らが3人で行動しているのも気になります。)

 

(18.01.04追記)

「偶奇」を考えると、日付の設定にも必然性が見えてきます。先程「秋」も境界のひとつだと書きましたが、物語は秋の中でも「9月」に始まります。2人の出会いは奇数月(結び)に始まるんですね。そして、隕石の落下の日付が「104日」。偶数月であり、ここにも「4」が登場。別れと死を暗示します。無駄のない設定だと思いませんか!

ちなみに、終盤で5年後の奥寺先輩と瀧くんが合う場面、これも「10月4日」なんですね(場所も四ツ谷)。奥寺先輩は薬指にリングをはめ、別れを表現しています。

その後で場面は移って桜の舞う春に。「夏と冬の境界」の「秋」が「昼と夜の境界=夕暮れ」に対応すると考えると、「春」は「夜と昼の境界」、つまり「夜明け」に対応します。この描写が、まさに2人の出会いを予感させる仕組みになっているのですね。実際2人は朝に再開します。

 


とりあえず、考察/分析は以上です。全部合ってるとは言わずとも、いくらかは監督の意図したものだと考えて間違いないでしょう。

描写の見間違いとかあったら教えて下さい。